ビジネスはシュミュレーション

 明日起こることを予測して準備することが、日々のシュミュレーションです。そこで、ビジネスに於いても顧客が何を要求するのか、取引には何か必要なのかを準備することが有効です。従って、ビジネスをシナリオに沿って、シュミュレーションすることにより、より早く経験を重ねることができます。

プロジェクトマネージャは作業余裕を読む

作業余裕の見込みは作業を計画通りに進めるポイントです。適切な余裕はプロジェクトを順調に進捗させるために必須です。プロジェクトの見積もり構成は図1の(A)に示す通り、各見積もり区分に余裕があります。そこで、見積もり中の余裕幅を読み、適切な余裕に最適化を行萎えるのが優秀なマネージャとなります。そして、見積もりに余裕を積む要因としてリスクがあり、一方隠れた余裕としてプラスのリスクがあり(リスクマネジメントの項目参照)、プラスとマイナスのリスクを読む能力も優秀なマネージャには必要です。

図1 見積もりの組み立て

スケジュール管理は完了日ではなく着手日管理

 スケジュール管理で監視するのが作業の作業完了日です。作業管理日が遅れると計画全体のスケジュールが遅れる可能性が高まります。作業管理日が遅れる原因の1つは業務の生産性です。作業の取りかかり時は生産性が低いにも拘わらず、計画時点では作業の生産性を最大で計画します。下の図に示す様に作業量の見積もりは日数×作業効率の正方形で計画されます。従って以下の絵にある様に作業開始時点での生産性の低さが、作業遅れとなって現れます。作業開始時に生産性が低いのは、作業開始に当たってスキルの獲得や情報収集が必要なことがあります。そして、作業開始時には作業の成果物生産には直接つながらない作業が必要なため、作業遅れが発生します。そこで、作業のスケジュール管理は完了日ではなく、着手日を管理することが考えられます。作業開始日の前に作業に着手しておいて、すこしずつ作業準備を進めることが、作業遅れ対策として有効です。

(関連事項 リーダシップ、作業余裕見積もり、参考資料

3秒ルールインテリジェンス

 3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能です、3秒ルールを基本にしています。3秒ルールは人の意思決定と行動選択は3秒サイクルで行われているとするルールで、3秒ルールインテリジェンスでは人の意思決定は3秒間の価値感の揺らぎに従ってゆらいでいると定義しており、3秒サイクルをもとに人の脳で行われる意思決定を模擬します。人の大脳内には図1に示す様に神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされています1)。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされます。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われます。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられます。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされます2)-5)。一方、ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒であり、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作します6)。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間内に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられます7)8)。そこで、微小時間を3秒と考え、人は図2に示す様に3秒後までの行動候補をつないで行動しているとした、意思決定モデルが3秒ルールインテリジェンスです。

1)エリック.R・カンデル,記憶のしくみ 上,講談社,2013
2)小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,1990
3)松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,1992
4)伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,1975
5)Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,1991
6) 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」,
日経クロステック,2021年5月13日
7) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004
8)持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31

3秒ルールインテリジェンスを用いた患者様子見行動の模擬に向けた基礎研究

3秒ルールインテリジェンスによる意思決

課題解決力は情報収集力で計る

 課題とトラブルに直面した時にマネージャはまずA、そしてBを指示します。このAが情報収集です。例えば、あるシステム開発を行う場合には目標、性能目標値、操作人員数、トランザクション数を調査します。この調査内容をフォームにしておけば、だれでも、まずAができます。そして、まずAで重要なことは考えずに動けることです。また、まずAでヒアリングを行う場合にも質問事項を決めておくことが有効です。例えば、医療では問診用紙に基本的な質問事項が書いてあり、問診は問診プロトコルに従って進められます。プロトコルは通信手順のことで情報の送受信に於けるやりとり手順のことです。

マネージャのスキルは使えるリソース数で計る

マネージャでも制約条件下にあるのが、プロジェクトマネージャです。そして、プロジェクトにおいて、進捗が芳しくない場合の打ち手としてプロジェクトマネージャの交代があります。プロジェクトマネージャの交代に期待することは、交代したプロジェクトマネージャが持つリソースとリソースの使い方により、現状の状況を打開することです。プロジェクトマネージャが持つリソースとは経営リソースと同じ人、お金、ものに加えて、経験情報、情報源、信用、取引関係があります。情報源とは直面している課題を理解して、打開情報が得られる人や組織のことです。従って、使えるリソースが多いプロジェクトマネージャが優秀なプロジェクトマネージャとなり、プロジェクトマネージャの能力は使えるリソースの数を数えることにより、測定することができます。使えるリソースの数を数えることにより、プロジェクトマネージャに限らず、一般的なマネージャの能力を測定することができます。しかし、実際には使えるリソースの数ばかりではなく、リソースの使い方も重要で、リソースの使い方が豊富なマネージャは課題解決手法を多く持つことになり、リソースの使い方は経験により獲得されます。

リスクマネジメントのまとめとBCP


1.リスクマネジメントのまとめ

リスクマネジメントはまず目標を認識して、目的達成を阻害するリスクを洗い出すことから始まります。行動しないことにはリスクは発生しません。あるいは、目標に向かう活動にリスクがあり、リスクマネジメントが必要となります。リスクマネジメントの手順のまとめは以下です。

(1) 目的を認識します。
(2) 基本的な手順を確認します。
(3) アクティビティを洗い出します。
(4) リスクの特定を行います。
(5) 定性的リスク分析ではリスクの性質と発生頻度を定性的リスク管理表にします。
(6) 定量的リスク分析では定性的リスク分析で対応が必要となった項目に関してリ
スク発生時のEVM(Expected Monetary Value:期待金額価値)を損失額と発
生確率から算出してリスク管理表に記入します。
(7) リスク管理表を作成してリスク対策案の策定を行い、リスク管理表に記入します。
加えてリスク対策案の発動条件を策定してリスク管理表に記入します。
(8) リスク管理表に記入されたリスク発生の早期検知を行うためにプロジェクトの
進行状況のモニタリング方法を策定します。モニタリングする項目として作業の
生産性、就労時間、ガントチャート上のマイルスストーン達成数、エラー発生
数、手戻り発生数、スタッフへのヒアリングがあります。
(9) リスクの発現を検知するためにモニタリングを行います。
(10) リスク管理表を見直します。

2.BCPとは(事業継続計画)
BCP(Business Continuity Plan)とは企業が緊急事態(自然災害、感染症等)に遭
遇した場合に事業資産の損失を最小限にとどめ、中核となる事業の継続と早期復旧のため
の活動や対策を文書化したものです*1。そこでBCP策定に当たっては、まず中核な事業と事業を支えるサプライヤーや顧客を設定しておくことが必要です。次に中核の事業を復旧、継続するための資源を設定することが必要です。

図1 BCP

*1 中小企業庁BCP策定運用方針https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/bcpgl_download.html

見積もり精度は余裕量

業務、特にプロジェクトでは見積もりがプロジェクトの成否を左右します。理由はプロジェクトは予算と期限があり、予算内かつ期限内に終わるのがプロジェクトの目標ですから、もともと不適切な予算設定と期限設定ではうまく行きません。そこで、予算と期限に関する見積もりが求められます。見積もり法も一般的な手法は積み上げ法です。積み上げ法では各担当者からの見積もりを積み上げます。しかし、図1の(A)に示す様に各要員のが提出した見積もりには余裕が含まれます。例えば、図1の(B)に示す様に余裕を集めて費用とコントロールしようとする手法がTOC*です。そして、マネジメントとは経営リソースを駆使して、いかに早く、いかに効率的に目標に到達するかです。経理リソースとは人、お金、ものに加えて、信用、取引関係、情報源、販売チャネル、ブランドがあります。そこで、優秀なマネージャーとは使えるリソースや情報源の多い人間となります。

*TOC(Theory of Constraints)ゴールドラット博士が唱えたマネジメント手法のこと

図1 見積もりの組み立て

リスク発現のシュミュレーション

 リスクの発現確率を正確に知ることは難しいために、リスク発現のシュミュレーションを行うことが考えられます。

1.モンテカルロ法

 シュミュレーションの代表的なものにモンテカル法があります。モンテカルロ法は賭博の町モンテカルロにちなんだ方法で乱数を用いて事象のシュミュレーションや数値解析を行う方法です。以下に示す例では乱数を用いて池の面積を計算することが可能でです。図1では 池の面積=長方形の面積×池に落ちた点数/全体の点数 により池の面積が求められるます。

図1モンテカルロ法

2.ランダムウオーク

ランダムウオークとはランダムに縦横に情報を伝えたり、行動を行いシュミュレーションを行う方法です。そこで、図2に示すようによっぱらいの進む様子のシュミュレーションを考える。本例では、酔っ払いが前後左右進む様子を乱数で与えることにより、酔っ払いの進む行先をシュミュレーションします。酔っ払いが前後左右に進むランダムな動きを模擬するために一様乱数を使用します。一様乱数とはサイコロの目の様に出る目の出現確率が一様である様な乱数のことです。一様乱数の例にサイコロがあり、エクセルには一様乱数を発生させる関数が用意されています。図2のランダムウオークの例では10面サイコロによりシュミュレーションを行います、そこで図3の様にサイコロの目と酔っ払いが進見方に関する変換テーブルを設置します。

図2ランダムウオーク
図3シュミュレーションテーブル

インシデント管理とモニタリング

1.インシデント

 リスクマネジメントの目的は組織や企業の業務や活動を止めないことです。そこで、組織や企業の業務や活動が停止する理由として、トラブルとインシデントがあります。組織の活動そのものが止まる状況がトラブルや事故で、活動そのものは止まらないまでも活動の効率が低下したり、トラブルを回避して活動が停止しなかった場合がインシデントです。インシデントにはトラブル発現が予測されたため、トラブル発現を意識して回避する場合と無意識のうちに回避した場合があります。

2.モニタリング

 リスク管理表に記入されたリスク発現の早期検知を行うために業務の進行状況をモニタリングすることが必要となります。リスク管理表にはリスクとトリガが記述されます。トリガとは当該リスクの発現が予期される状況のことで、例えばトリガにはコンピュータのハードディスクの故障が予見される場合の異音や行程遅れが予見される場合の作業遅れがあります。そこで、リスク発現の早期検知を行うためにモニタリングにより、トリガの発現を観察することが必要となります。そして、モニタリングを行う項目として作業の生産性、就労時間、ガントチャート上のマイルスストーン達成数、エラー発生数、手戻り発生数、スタッフへのヒアリングがあります。しかし、モニタリング対象を数値化することは難しく、モニタリングは担当スタッフへのヒアリングが主となり、人は不確実であるため、モニタリングの精度向上が課題となります。以下にモニタリングを含む、リスクマネジメントの例を示します。

(リスクマネジメントの例)

 ある工場では年間の償却費が1台1000万円の機械を導入している。機械の故障率は0.1件/月であり、機械が故障すると3日間程、修理と調整にかかる。機械が故障した場合の損害は1日当たり50万円である。ただし、機械の保守に入ると2日で機械故障は復旧する、保守費は1年間で20万円である。ただし機械故障は年間に最大1回とする。

図1 モニタリングの例