3秒ルールインテリジェンスは、人と同じプロセスで意思決定を行う人工知能です、3秒ルールを基本にしています。3秒ルールは人の意思決定と行動選択は3秒サイクルで行われているとするルールで、3秒ルールインテリジェンスでは人の意思決定は3秒間の価値感の揺らぎに従ってゆらいでいると定義しており、3秒サイクルをもとに人の脳で行われる意思決定を模擬します。人の大脳内には図1に示す様に神経細胞(ニューロン)が約100億個あり、脳全体の神経細胞は1000億個あるとされています1)。神経細胞は核と樹状突起と信号伝送路に当たる軸索から構成され、樹状突起は信号入力をつかさどる受容体を持つ。神経細胞間の信号伝達はシナプス間隙において行われており、1つの神経細胞は数千以上のシナプスを持つとされます。シナプスとは神経細胞同士の接続部分のことであり、特定の信号がシナプス前部に積み重なるとシナプスに於いて信号伝達が行われます。シナプス間隙上の信号伝達は科学物資の量と組み合わせで表現されるため、各シナプスは高度な情報処理を行っていると考えられます。シナプスは人では10兆個あるとされ、10兆個のシナプスの結合により経験が記録され、外部刺激により状況判断と行動発現がなされます2)-5)。一方、ニューロン内の伝達速度は概ね、1m/秒から100m/秒であり、最近のCPU(中央処理演算装置)は約100億程度のトランジスタ(7nm製造プロセスの場合)で構成され、3Ghz(1秒間に30億回の振動数)程度で動作します6)。人の神経細胞の動作速度はCPUに比べて低速であるにも拘わらず、人が高度な行動選択できる理由は、脳は並列に状況判断を行い、微小時間内に実行可能な行動候補を用意しているからであると考えられます7)8)。そこで、微小時間を3秒と考え、人は図2に示す様に3秒後までの行動候補をつないで行動しているとした、意思決定モデルが3秒ルールインテリジェンスです。
1)エリック.R・カンデル,記憶のしくみ 上,講談社,2013
2)小林春雄他:「神経情報生物学入門」,オーム社,1990
3)松本元・大津展之:「神経細胞の生物学的特性」,培風館,1992
4)伊藤薫:「脳と神経の細胞学」,培風館,1975
5)Armand M.de Callatay,島田禎晉訳:「人間の脳と人工知能」,丸善株式会社,1991
6) 「IBMが2nm半導体プロセスの試作成功、研究トップに聞く「ムーアの法則」の将来」,
日経クロステック,2021年5月13日
7) 持田 信治,池添 律代,矢鳴 虎夫:「判断マトリクスを使用した内部状態モデル構築に関する研究」,バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 6 巻 1 号,10-16,2004
8)持田 信治,橘 昌幸:「人の観点から見た環境評価に関する研究」,BMFSA学会誌 VOL11 NO.2 PP.25‐31